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中島 信昭*; 八ッ橋 知幸*; 迫田 憲治*; 岩倉 いずみ*; 橋本 征奈*; 横山 啓一; 松田 晶平
Chemical Physics Letters, 752, p.137570_1 - 137570_5, 2020/08
被引用回数:1 パーセンタイル:4.85(Chemistry, Physical)溶液中のユウロピウムイオンにレーザー光を照射することによりEuとEuとの間の光酸化還元反応を調べた。3種類のレーザーを用いてその反応効率、波長依存性、レーザーパワー依存性などを観察した。波長308nmのナノ秒レーザーでは1光子過程が起こり酸化・還元とも量子収率0.5前後の高い値が得られた。394nm、5mJのナノ秒レーザーパルスでは2光子過程が起こり還元の量子収率は0.015程度になった。308nmの結果よりも1桁以上低い値ではあるが、容易に光還元を起こすことができることを明らかにした。パルスエネルギーを増やすことにより効率をもっと上げることができると考えられる。
尾崎 卓郎; 木村 貴海; 大貫 敏彦; Francis, A. J.
Radiochimica Acta, 94(9-11), p.715 - 721, 2006/11
被引用回数:10 パーセンタイル:57.07(Chemistry, Inorganic & Nuclear)4種のグラム陰性菌(Pseudomonas fluorescens, Alcaligenes faecalis, Shewanella putrefaciens, Paracoccus denitrificans)とユウロピウム(Eu)との相互作用をpH3から5の範囲でバッチ実験法及び時間分解レーザー誘起蛍光分光法(TRLFS)で調べた。細胞へEuの吸着時間変化を調べたところ、どの菌についても大きな吸着速度が観測された。P. fluorescensはpH3で、A. faecalisとP. denitrificans.ではすべてのpHで、またS. putrefaciensではpH4と5において5分以内に吸着量は最大に達した。P. denitrificansでは、吸着量は最大に達した後に徐々に減少した。これは、Euに親和性を有する物質を細胞が放出することを示す。TRLFSにより、Euはどの微生物についても多座配位で安定化されていることがわかった。また、P. denitrificans上でのEuの配位子場は好塩微生物上でのそれに匹敵するほど強く、P. fluorescens, A. faecalis及びS. putrefaciens上での配位子場は、非好塩微生物での典型的な強さとほぼ同じであった。本研究により、類似の細胞膜構造を有するグラム陰性菌どうしでも、Euの吸着状態は異なることがわかった。
尾崎 卓郎; 木村 貴海; 大貫 敏彦; 吉田 善行; Francis, A. J.
Environmental Toxicology and Chemistry, 22(11), p.2800 - 2805, 2003/11
被引用回数:21 パーセンタイル:45.14(Environmental Sciences)有害金属の環境中での挙動は、種々の無機または有機物質により支配される。本研究では、環境中に広く存在し、有害元素の環境挙動に影響を与えるクロレラ()を対象として、Cm(III)及びEU(III)との相互作用を評価した。バッチ評価によりpH3~5の溶液からのクロレラへのCm(II)及びEu(III)の分配比を測定した。両イオンの分配比は3分以内に最大に達し、その後は徐々に減少した。これは、Cm(III),Eu(III)に配位能を有する物質をクロレラが溢泌し、細胞上に吸着した同イオンが時間とともに溢泌物により脱着されることを示唆する。また、両イオンの分配比は高pHほど低く、溢泌物と両イオンとの親和性または溢泌量にpH依存性があることがわかった。時間分解レーザー誘起蛍光分光法によりクロレラ上に吸着したEu(III)の配位状態を調べ、吸着したEu(III)の内圏に存在する水分子の数が水溶液中のそれと同一であることがわかった。また、同手法により、クロレラ細胞上のEu(III)の吸着部位が細胞壁主成分であるセルロースであることも明らかにした。
尾崎 卓郎; 木村 貴海; 吉田 善行; Francis, A. J.*
Chemistry Letters, 32(7), p.560 - 561, 2003/07
被引用回数:5 パーセンタイル:26.45(Chemistry, Multidisciplinary)構造が類似した生体高分子であるキチン,キトサン及びセルロースへのEu(III)の吸着挙動を、分配比測定法及び時間分解レーザー誘起蛍光法(TRLFS)により調べた。Eu(III)のキチン及びキトサンへの分配比はlogK=24(gcm)であり、それらはセルロースへの分配比logK=0.53(gcm)より大きい。これらの生体高分子は類似した高分子構造を有するにもかかわらず、Eu(III)の配位環境は著しく異なることがTRLFSにより明らかになった。すなわち、キチンに吸着したEu(III)は内圏配位型,キトサンに吸着したそれは外圏配位型,セルロースに吸着したそれは、内圏型・外圏型の中間的な配位状態を示した。金属イオンと高分子との相互作用の解明には、高分子構造のみならず吸着イオンの水和構造の正確な把握も必要である。
鈴木 英哉*; 長縄 弘親; 館盛 勝一
Solvent Extraction and Ion Exchange, 21(4), p.527 - 546, 2003/03
被引用回数:12 パーセンタイル:45.01(Chemistry, Multidisciplinary)陰イオン性界面活性剤である、Aerosol OT(AOT)と、分子性抽出剤である、かさ高なジアミドとを組合せることによって、硝酸水溶液からヘキサンへのユウロピウムの抽出に対し、非常に大きな効果が現れることがわかった。これは、有機相であるヘキサン中にW/Oマイクロエマルションが生成したことに起因する。このW/Oマイクロエマルション中には、AOTの負電荷と疎水基に囲まれた特殊な微小液滴が存在し、静電相互作用と疎水相互作用に基づいて、陽電荷を持ち、なおかつ疎水基を持った化学種が濃縮されやすい「場」となっている。よって、金属イオンと分子性抽出剤との錯体のような両親媒性の陽イオン化学種が非常に効率よく濃縮されることになる。本研究では、W/Oマイクロエマルションの安定化や、それに伴う金属イオンの抽出に及ぼす、分子性抽出剤や電解質の役割について検討した。
正木 信行; 音部 治幹; 中村 彰夫; 原田 大実*; 伊藤 健太郎*; 佐々木 吉慶*; 日夏 幸雄*
Journal of Nuclear Science and Technology, 39(Suppl.3), p.217 - 220, 2002/11
EuMO(0y1.0)(M=Th, U)系について、Euメスバウア分光法を用いて局所構造を調べた。粉末X線回折によると、M=Th系では、y0.5で酸素空格子点(V)が無秩序配置をとる欠陥蛍石型相を、0.5y0.8でVが秩序化したC型相と欠陥蛍石型相を、y0.85の領域でC型相と単斜晶のFuO相となることが示された。この系で、Euの異性体シフトは、Eu固溶率yに従って増加した。Euに対するOの配位数(CN)はCN=8-2yに従って減少するので、Oイオン間の反発力の減少によって、平均Eu-O間距離も減少する。この相関は、酸化物系におけるEuの異性体シフトとEu-O結合距離の経験的相関に従っている。U系において相図はTh系と同様であったが、異性体シフトは変化せずTh系に比べて小さな値をとった。
木村 貴海; 永石 隆二; 有阪 真*; 尾崎 卓郎; 吉田 善行
Radiochimica Acta, 90(9-11), p.715 - 719, 2002/11
被引用回数:15 パーセンタイル:67.77(Chemistry, Inorganic & Nuclear)水熱溶液(高温高圧水溶液)は種々の地球環境において見いだすことができるが、水熱条件下でのf元素の実験的研究はきわめて少ない。水熱溶液中でf元素の分光学的状態分析を行うための光学セルを調製した。この光学セルは、常温常圧から723K及び40MPaまでの温度、圧力をそれぞれ制御できるため、発光及び吸収分光法と組み合わせて水熱条件下でのf元素の酸化還元,加水分解,錯形成などの分光学的研究が可能である。本装置を水熱溶液中のEu(III)に適用し、発光特性(発光スペクトル,発光寿命)の温度・圧力依存性を測定した。発光特性に圧力依存性は見いだされなかったが、約500Kを境に温度依存性が大きく変化した。(1)励起Eu(III)から配位水和水へのエネルギー移動,(2)Eu(III)の加水分解,(3)Eu(III)/Eu(II)平衡などの温度依存性からこの変化を考察した。
永石 隆二; 木村 貴海; 吉田 陽一*; 古澤 孝弘*; 田川 精一*
Journal of Physical Chemistry A, 106(39), p.9036 - 9041, 2002/10
被引用回数:3 パーセンタイル:8.63(Chemistry, Physical)ユウロピウム(III)の還元に及ぼす配位状態の影響を解明するため、パルスラジオリシス法により水和電子とアミノポリカルボン酸錯体との反応の速度定数を測定した。ここで、錯体の内圏水和数が異なる9種類のアミノポリカルボン酸を用い、錯体の水和数や安定度定数,酸化還元電位と速度定数との線形関係を見いだした。このような錯体の還元機構を明らかにするため、速度定数の温度依存性により反応の活性化パラメータを評価し、ユウロピウムの3価/2価間の配位状態変化に伴う配位子の再配向が反応に直接反映していること、つまり、反応に対する支配因子がエントロピー項であることを明らかにした。さらに、速度定数のイオン強度依存性により還元機構における拡散過程について検討した。
木村 貴海; 永石 隆二; 加藤 義春; 吉田 善行
Journal of Alloys and Compounds, 323-324(1-4), p.164 - 168, 2001/07
被引用回数:50 パーセンタイル:87.59(Chemistry, Physical)水-非水溶媒2成分混合系に溶解したEu(III)の第1配位圏内の溶媒組成を発光寿命の測定により研究した。ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド、メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ホルムアミドまたはジメチルアセトアミドと水との混合系において、第1配位圏内の水分子数(内部水和数)を決定するとともに、非水溶媒分子がEu(III)に優先的に溶媒和することを明らかにした。一方、ピリジン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトンまたはアセトニトリルと水と混合系では溶媒和に比べて水和が強く、溶媒分子自身による消光なども影響するため、内部水和数の直接決定は困難であった。各混合系において、溶媒和の強さはバルク溶媒組成とともに大きく変化した。溶媒和の強さは溶媒のドナー数(電子供与性)及び双極子モーメント(静電的相互作用)の順序にほぼ一値したが、一部、溶媒分子の立体的障害も影響することを明らかにした。
高梨 光博; 駒 義和; 青嶋 厚
JNC TN8400 2001-022, 60 Pages, 2001/03
TRUEXプロセスの数値シミュレーションコードを開発した。このコードを用いて、高レベル放射性物質研究施設(CPF)で行われた向流抽出試験におけるアメリシウムとユウロピウムの濃度プロファイルを計算した。計算の結果は実験結果とほぼ一致した。また、プルトニウム燃料センターで行われたTRUEX法を用いたAm回収試験の条件について検討し、スクラブ液中の酸濃度の低下および溶媒・逆抽出液量の低下により、逆抽出効率の向上および試験廃液の低減が可能となる条件を示した。試験条件を設定できるようにするために、計算対象成分にジルコニウム、モリブデンおよび鉄を追加し、これらの金属およびアメリシウムやユウロピウムとシュウ酸との錯体の抽出挙動に対する影響を計算コードに加えた。シュウ酸錯体の影響を考慮することにより、アメリシウムやユウロピウムなどの濃度プロファイルにおいても、水相濃度の計算値が、錯体の影響を考慮していない場合に比べて上昇した。CPFで行われた試験に対して、シュウ酸添加量とアメリシウム回収率の関係を計算により調べたところ、過去の試験で用いられたシュウ酸濃度が、処理溶液および洗浄溶液からともに0.03mol/Lであったのに対して、これをそれぞれ0.045および0.06mol/Lとしてもアメリシウムの回収率を十分高い値(99.9%以上)に維持できることが明らかになった。したがって、添加できるシュウ酸濃度には余裕があり、ジルコニウムなどの除染性をさらに高められる可能性があった。加えて、ユウロピウムを回収するプロセスフローシートにおけるシュウ酸濃度条件の設定を計算によりおこなった。
高橋 嘉夫*; 多田 あきさ*; 木村 貴海; 清水 洋*
Chemistry Letters, (6), p.700 - 701, 2000/06
水-モンモリロナイト界面での14ランタノイド元素の分配をICP-MSを用いて同時に測定した。pH4から6の範囲において、ランタノイド元素の原子番号に対する分配係数の依存性から、モンモリロナイト表面との外圏または内圏錯体の生成を評価した。外圏錯体の生成は、配位水和水によるEu(III)イオンの発光の消光挙動により確認した。
逢坂 正彦; 小山 真一; 三頭 聡明; 両角 勝文; 滑川 卓志
JNC TN9400 2000-058, 49 Pages, 2000/04
高速炉におけるMA核種の核変換特性の評価に資するため、照射済MOX燃料中のCm分析技術の開発及び高速実験炉「常陽」照射済MOX燃料中のCm同位体の分析を行った。迅速性・簡便性等を考慮した上で、照射済MOX燃料中のCmの同位体分析において必要なCm分離のための手法として硝酸-メタノール系陰イオン交換法を選択した。本手法の基本的な分離特性を把握する試験を実施し、Cmの溶出位置、Am,Eu等の元素との分離能等を把握した。本手法を照射済MOX燃料中のCm分析に適用するにあたり、分離特性の把握試験の結果より分離条件を評価し、溶出液取得条件を最適化して、それぞれ不純物の除去及びAmの除去を目的とした2回の分離によりCmを回収するプロセスを考案した。本プロセスを適用することにより、Cmの高回収率及びAm、Eu・Cs等の不純物の高除去率を同時に達成することができた。本手法を用いて照射済MOX燃料中からのCmの分離試験を実施し、分離したCmを質量分析することにより、照射済MOX燃料中のCm同位体組成比データの測定が可能であることを確認した。一連の試験により、硝酸-メタノール系陰イオン交換法によるCm分離手法を用いた照射済MOX燃料中のCm分析技術を確立した。本分析技術を用いて高速実験炉「常陽」照射済燃料中のCm同位体の分析を行った。その結果、高速炉内で燃焼度が約60GWd/t以上まで照射されたMOX燃料中のCmの含有率は約1.44.010のマイナス3乗atom%であり、さらに極微量の247Cmが生成することを確認した。また燃焼度が60120GWd/tの範囲ではCm同位体組成比はほぼ一定となることが分かった。
長縄 弘親; 鈴木 英哉; 館盛 勝一; 那須 昭宣*; 関根 達也*
Bulletin of the Chemical Society of Japan, 73(3), p.623 - 630, 2000/03
被引用回数:6 パーセンタイル:35.29(Chemistry, Multidisciplinary)アクチノイド、ランタノイドの抽出分離に有用な新しい抽出剤として注目されているジアミドについて、その抽出能の向上に、イオン対抽出に基づく協同効果が有効かどうかを検討した。第2の抽出剤として、疎水性でかさ高の陰イオンであるピクリン酸イオンを用いた。本研究ではユウロピウム(III)の抽出に与える協同効果を検討し、そのメカニズムを解明した。その結果、Eu(III)にジアミド分子が2つ配位し、さらに対イオンとして、3つのピクリン酸イオンを伴ったイオン対錯体の生成が、この協同効果の大きさを決定づけていることがわかった。この錯体の抽出定数は対イオンが硝酸イオンに替わった錯体の抽出定数の610倍という大きさで、このことが、この系で見られる極端に大きな協同効果の原因であることがわかった。ピクリン酸イオンは、疎水性が大きいことから、抽出の向上に極めて有効に作用することがわかった。
高橋 嘉夫*; 木村 貴海; 加藤 義春; 薬袋 佳孝*
Environmental Science & Technology, 33(22), p.4016 - 4021, 1999/00
被引用回数:46 パーセンタイル:74.36(Engineering, Environmental)水溶液中でポリアクリル酸、ポリメタクリル酸で被われたモンモリロナイトなどの有機-無機複合体上に吸着したEu(III)のスペシエーションに時間分解蛍光法を応用した。Eu(III)吸着種の発光寿命、発光スペクトルの測定から、Eu(III)はEu(III)-ポリカルボン酸錯体としてモンモリロナイト上に吸着することを見いだした。さらに、Eu(III)-ポリカルボン酸錯体及び無機Eu(III)化学種の安定性が有機-無機複合体上のEu(III)吸着種を制御することを明らかにした。これらから、天然水系においてEu(III)がフミン酸-粘土鉱物などの有機-無機複合体と接触すると、Eu(III)はフミン酸錯体として吸着することが示唆された。
高橋 嘉夫*; 木村 貴海; 加藤 義春; 薬袋 佳孝*; 巻出 義紘*; 富永 健*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 239(2), p.335 - 340, 1999/00
被引用回数:15 パーセンタイル:72.22(Chemistry, Analytical)天然に存在するフミン酸のような高分子有機酸とアクチノイド(III)及びランタノイド(III)との錯形成は重要であるが、その不均一性によりその錯構造は明らかではない。Eu(III)とポリカルボン酸[ポリアクリル酸(PAA),ポリマレイン酸(PMA),ポリメタクリル酸(PMAA),ポリヒドロキシアクリル酸(PHAA)]をモデル物質に用いて、レーザー誘起分光法により錯体の水和数Nの測定からその構造を研究した。PAA錯体ではpH2.5から錯形成し、3.5pH9で2.5N4であった。PMM及びPHAA錯体のNは安定度定数と逆の順序(PHAA錯体PAA錯体PMA錯体)であった。これは、より多くの脱水和により安定な錯体が形成されることを示す。PMAA錯体のNのpH依存性は他の錯体と異なり、pH7で極大を示した。pH滴定、粘性測定からPMAA錯体の急激な形態の転移としてこれを解釈した。
木村 貴海; 加藤 義春
Journal of Alloys and Compounds, 275-277, p.806 - 810, 1998/00
被引用回数:110 パーセンタイル:96.65(Chemistry, Physical)ランタノイド[Ln](III)イオンの内部水和数Nと発光寿命との相関を調べるために、一連のポリアミノポリカルボン酸を配位子とするLn(III)錯体[Ln=Sm,Eu,Tb,Dy]の水和状態を詳細に研究した。DO-HO溶液中のLn(III)の発光寿命測定から得た直線相関と、前に報告したHO中でのNから、錯体中のNを評価した。各錯体中のEu(III)とTb(III)の平均のNは文献値とよく一致した。Sm(III)とDy(III)の最低励起状態と基底状態のエネルギー差はほぼ等しいため同様な消光挙動が期待できるが、測定したSm(III)のNはDy(III)のそれより大きな値を示した。また、DO中の錯体の発光寿命の測定では、これらの配位子によるLn(III)の消光はみられなかった。これらの結果は、Sm(III)の総配位数はEu(III),Tb(III)及びDy(III)よりも約1大きいことを示唆する。Ln(III)のN決定のための相関関係の導出を検討した。
木村 貴海; 加藤 義春
Journal of Alloys and Compounds, 278, p.92 - 97, 1998/00
被引用回数:69 パーセンタイル:92.91(Chemistry, Physical)時間分解蛍光法を用いて、流動(室温)及び凍結(液体窒素温度)状態にある高濃度塩溶液(NaCl,NaNo及びNaClO)中のランタノイド[Ln](III)イオン[Ln=Sm,Eu,Tb,Dy]の内部水和数Nを発光寿命測定により研究した。凍結溶液中のLn(III)の消光挙動は、流動溶液と同様にイオンの励起状態から水和水のOH振動へのエネルギー移動によることを明らかにした。各温度でのDO-HO溶液中のLn(III)の発光寿命測定から得た直線相関と、前に報告したHO中でのNから塩溶液中のNを評価した。流動溶液中でのLn(III)のNから、NOは内圏錯体を生成するがClとClOは生成しないこと、ClOは高濃度で水和水の消光効果を促進することを明らかにした。一方、凍結溶液中では、ClとNOが内圏錯体を生成しNが約1及び2~3減少すること、ClOは高濃度でも水和に全く影響しないことを見出した。
木村 貴海; 加藤 義春; 武石 秀世; G.R.Choppin*
Journal of Alloys and Compounds, 271-273, p.719 - 722, 1998/00
被引用回数:48 パーセンタイル:88.86(Chemistry, Physical)III価アクチノイド、ランタノイドの分離は、高濃度塩素系での陽イオン交換で可能であるが、硝酸系や過塩素酸系では不可能である。媒質中での分離機構の違いは、吸着種の分子レベルでは明らかではない。これまで、時間分解蛍光法によるCm(III)及びEu(III)の内部水和数Nの決定法を報告してきた。本報では、この方法を固液界面でのこれらイオンの水和状態の研究に適用した。陽イオン交換樹脂AGWX8を試用し、トレーサーによる分配計数K,ならびに酸溶液及び樹脂/溶液界面におけるNを測定した。5M以上の塩酸溶液中でCm(III)とEu(III)のK及びNに違いがみられた:K(Eu)K(Cm),N(Eu)N(Cm)。これは、Eu(III)よりCm(III)がクロロ錯体形成が強いことによる。高濃度塩酸中で樹脂上のイオンの内圏から約3-4の水分子が排除されていた。硝酸、過塩素酸溶液での結果も併せて報告する。
高橋 嘉夫*; 薬袋 佳孝*; 木村 貴海; 富永 健*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 234(1-2), p.277 - 282, 1998/00
被引用回数:37 パーセンタイル:91.98(Chemistry, Analytical)フミン酸共存下でのIII価ユウロピウムとアメリシウムのカオリナイト、モンモリロナイトへの吸着挙動を研究した。この系で、フミン酸もまたカオリナイト、モンモリロナイトに吸着した。速度論的研究は、Eu(III)とAm(III)が水溶液中または粘土鉱物上でフミン酸錯体を形成することを示す。これらIII価イオンとフミン酸の吸着のpH依存性は支持電解質濃度Cs=0.02及び0.1Mで一致した。これはpH3~10でフミン酸錯体がEu(III)とAm(III)の主要な化学種であることを示す。Cs=0.7Mでフミン酸は顕著に吸着し、Eu(III)とAm(III)もCs=0.02及び0.1Mのときよりも固相に吸着した。これらの結果はフミン酸で被われた粘土鉱物のような擬コロイドが環境中におけるIII価イオンの収集体として重要であることを示す。III価イオンの挙動にとってフミン酸の挙動が重要なので、粘土鉱物へのフミン酸の吸着を検討した。
和田 幸男; 佛坂 裕泰*; 佐々木 聡; 冨安 博*
PNC TY8607 97-002, 158 Pages, 1997/05
本報告書は、平成4年から東京工業大学原子炉工学研究所の富安研究室と動燃事業団先端技術開発室とで継続的に進めている、光化学研究に関する平成8年度共同研究成果報告書である。本年度は昨年度に引き続き、アクチノイドおよびランタノイド元素の光化学分離および光励起量子効果利用に関する基礎研究を分担して行った。その結果、3M硝酸溶液中のPuおよびNpを光化学的に原子価調整し、TBP溶媒中に共抽出した後、選択的にNpだけを再び同じ3M硝酸溶液中に戻す、光化学逆抽出技術の原理実証に成功した。また、アクチノイドおよびランタニノイド元素の光化学的分離手段として可能性のある、これらの元素の大環状配位子錯体を用いた光励起一反応挙動実験を行った。その結果、多種類のLn3+を含む水溶液中の特定のLn3+錯体に固有な光吸収波長の光を照射することにより、そのLn3+を選択的に分離することが可能であると結論された。また、Cm3+の模擬物質として用いたEu3+に関する知見では、Eu3+と同程度の励起寿命と遥かに大きなモル吸光係数を持つCm3+に対しても適用可能であると推定された。